てぃーだブログ › ヒット商品応援団日記

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お知らせ

2014年03月24日

Posted by ヒット商品応援団 at 15:02 Comments( 0 ) ビジネス
約6年半ほど続けてきたブログですが、初期の目的である沖縄の人との勉強会の補助資料としてのブログの役割も終えたので、3月末をもってクローズいたします。長い間ご覧いただきありがとうございました。

ヒット商品応援団


平成の応援歌

2014年03月15日

Posted by ヒット商品応援団 at 15:47 Comments( 0 ) ビジネス
ヒット商品応援団日記No574(毎週更新)   2014.3.15.

卒業の時期になったが、今年もNHKの全国学校音楽コンクールの課題曲や森山直太朗の「さくら」が歌われるのであろうか。一方、卒業とは無縁である東日本大震災の被災地で歌われる唄はどんなものになっているのだろうか。放射能汚染が今なお続く福島にはさくらの名所が多く、高い汚染地域では誰一人愛でることも無く開花し散ることになる。
ところで20世紀以降のポピュラー音楽に多大な影響を与えたのがブルースであるが、19世紀後半頃に米国南部で黒人霊歌、労働歌などから発展したものと言われている。日本の場合はどうかと言えば、それは民謡ということになる。ウイキペディアによれば、明治時代に民謡という呼称になり、現存する民謡は58,000曲にもなるという。そして、その多くは第一次産業の労働歌であった。林業であれば「木挽き歌」であり、漁業であれば「江差追分」や「ソーラン節」、農業であれば「安来節」となる。これらがある意味日本のソウルミュージックとなる。

そして、戦後の日本を見ていくと、第一次産業が徐々に衰退し、第二次産業である製造業の時代を迎え、1960年代以降は歌謡曲の時代となる。映画「Always三丁目の夕日」の世界ではないが、集団就職として東北各県から東京へとやってくる。故郷を離れ、故郷を想う歌謡曲が生まれる。故阿久悠さんが作詞した「津軽海峡・冬景色」や「舟歌」がレコード大賞をとった歌謡曲の世界である。こうした歌謡曲を追いかけるように、ポピュラーミュージック、Jpopが生まれる。近代化・工業化が進んだこの時代、歌は労働歌ではなく、失っていくものを取り戻す歌となる。それは故郷や自然であり、家族や友人といった人であり、時として祭りといった地方の文化であった。ちなみに2010年度の産業別人口の割合(全国平均)は、第一次産業4.0%、第二次産業23.7%、第三次産業72.3%となっている。そして、東京の第一次産業はと言えば0.4%、割合が一番高いのが青森の12.7%である。

昭和から平成へと時代が変わった1990年代はどうかというと、時代に生きるという自己投影の一つであった音楽は特筆するような変化は無かった。無いというより、ある意味混乱した時代であったと思う。少し短絡した言い方をするならば、大人達が作った既成価値観、多くの神話が崩れ去った時代であった。不動産バブルの崩壊から始まった多くの神話崩壊、潰れない大企業神話、安定した終身雇用という神話、リストラという言葉が新聞紙面に初めて現れた。・・・・・そして、オウム真理教によるサリン事件、あるいは阪神淡路大震災という社会不安が若い世代を襲い、結果最後の居場所である家庭も崩壊し、都市を漂流する少女達を生み出した。この10数年、唄が歌える時代では無かったということである。

実は、3年ほど前から、オリコンの上位を占めるようになったAKB48についてブログに書くことが多くなった。その理由は秋葉原、アキバがサブカルチャーを生み出す街、オタクにとってその過激なこだわりを満足させる「何か」が存在していた。そのオタクの街を大きく転換させたのがAKB48であった。以前そんな転換点を次のようにブログに書いたことがあった。

『数年前まで誰も見向きもしなかった、冷笑すらされたAKB48が昨年ブレークする。卒業した前田敦子を見てもわかるが、「会いに行けるアイドル」という、どこにでも居そうな身近でかわいい少女はオタク達が創った日常リアルな物語と言えよう。そして、日本ばかりでなく世界各国にAKB48が誕生している。アキバはAKB48オタクの聖地になり、恐らく第三次マスプロダクト化が始まったと言うことであろう。』

そして、更にそのAKB48が大きく転換していることを次のようにも書いた。

『以前から秋葉原という街がオタクというサブカルチャー、いやカウンターカルチャーの申し子達を産んでいることに注視してきたが、AKB48もそうした芽の一つと考えてきた。ところが今回の選挙結果はどこにでもある政治選挙と同様の在り方を見せている。AKBオタクではない私であるが、指原莉乃はアイドルとして恋愛禁止というメンバーの掟を破りスキャンダルを起こした女性である。その女性が選挙の結果1位となり、センターを手に入れたということである。恋愛禁止というモラルハザードはどうなるのか心配であるとするAKBフアンもいるが、フアンのコアとなるオタク達にとってどのように感じているのであろうか。オタクにとってアイドルとは触れてはならない存在としてある。オタクがオタクであるゆえんは触れえぬアイドルとの握手会が唯一交流できる方法であった。その禁を破ったアイドルはアイドルとは思わないであろう。恐らく、AKB48を支えてきたオタクフアンは離れていくと思われる。つまり、秋葉原駅北口から数分離れた雑居ビルの上の小さな常設ステージで歌い、踊っていたAKB48も、アジアに進出するまで広がり、オリコンのヒットチャートでは上位を総なめにするまでとなった。つまり、見事にマスプロダクト化し、次のフェーズへと進んできたということである。勿論、オタクではないフアンが圧倒的に増えることによってオタクの臨界点を超え、結果アイドルもまた変質してきたということであり、指原莉乃はその象徴である。』

そして、このフェーズをオタクのアイドルから国民的アイドルへの転換であると指摘をした。アイドルとは人気者のことであり、幼い子供達からお年寄りまで、幅広い人気者になったということである。人気とは読んで字の如く、人の気を引くということで、時代の雰囲気や潜在的に求めている「何か」を良く表している。その「何か」についてであるが、「ゆるキャラ」人気と同じ根っこであると言える。
「ゆるキャラブーム」を下支えしているのは、プロのデザイナーではなく、漫画やアニメに慣れ親しみイラストを気軽に書いている若い世代がチョット投稿してみようかといった具合である。プロの小説家による書籍が売れない中、ケータイ小説のヒットもそうしたユーザー・顧客の側から生まれた。金融の世界におけるデイトレーダーも同様である。今までの作り手、供給者がユーザー・顧客の側に移ったということである。インターネットメディアが従来の提供者であるマスメディアから、YouTubeに代表されるような個人放送局への転換を促したのと同じ「根っこ」である。



つまり、素人が表現する術(メディア)を手に入れたということである。結果どういうことが起こったかというと、プロのような遠い存在ではなく、身近さ、親近感のある存在。AKB48のように「会いにいけるアイドル」であり、握手会にも参加できる存在に圧倒的な支持が集まる。あるいはプロの手による構えた、緊張感ある「美」ではなく、チョット手を伸ばせば触れることができる「かわいい」存在への支持となる。
作詞家故阿久悠さんは「昭和が世間を語ったのに、平成では自分だけを語っている」とし、そういう時代の雰囲気の中で、男の影が薄くなったのではないか、そんな男のために「熱き心に」という曲を小林旭に歌わせた。
AKB48は平成という時代の中で、「平成という世間」を共有することを選んだ。こうした共有への転換を決定的なものとしたのがあの「恋するフォーチュンクッキー」であった。明るく、リズミカルに”さあ、一緒にダンスをしよう!”と呼びかけ、多くの素人の参加を促した曲である。ここに平成のポピュラーミュージックの新しさがある。結果、あのど素人の「佐賀県庁」を始め各地域のご当地ダンスが次々とYouTubeに投稿するまでになった。みんな自分自身も含めて応援し合う、元気になりたいのだ。

平成という時代の中で、「平成という世間」を共有し合う、阿久悠さんの言葉を借りれば「平成の歌謡曲」の誕生だと思う。そして、やっとそうしたことを目指す熱い心を持った若い世代が出てきたということだ。
3年という時を経た3.11であるが、AKB48も被災者への応援歌「風は吹いている」を歌っている。しかし、「恋するフォーチュンクッキー」の一コマにもなっているが、体育館で小さな子供達を前に”さあ、一緒にダンスをしよう!”と呼びかけて踊るシーンがある。「風は吹いている」における秋元康氏の詞も良いが、子供も、お姉さんも、おじさんもおばさんも、体を動かし元気になれる「恋するフォーチュンクッキー」こそ平成という「今」への応援歌であろう。
少し理屈っぽい説明になるが、第三次産業従事者が70%を超えた時代の応援歌は、素人同士、ごく普通の人間同士が共に励まし応援し合う歌、「共有歌」が求められていると言うことだ。(続く)



未来塾(2)創業の精神に学ぶ

2014年03月10日

Posted by ヒット商品応援団 at 13:54 Comments( 0 ) ビジネス
未来塾(2)創業の精神に学ぶ            ヒット商品応援団日記No573(毎週更新)   2014.3.10.




中島みゆきの歌に「ファイト」という応援歌があります。
この歌はパーソナリティをつとめていたラジオ番組で読んだ
女の子からのはがきがきっかけであったと聞いています。
「戦う君の歌を、戦わない奴が笑うだろう」という
繰り返されるフレーズの歌です。
当時のラジオの深夜番組は若者の声を集め再び発信するという、
ネット時代の掲示板の役割をしていたのだと思う。
この未来塾も日々のビジネス現場で悩み戦っている
あなたへの応援歌でありたいと願っています。






 「創業の精神に学ぶ」
体験という暗黙知の継承
 ダスキン


自明灯、そして燈々無尽

自明灯という言葉がある。自ら明かりを灯し、その灯は次からから次へと灯されていく様のことだが、その語源はお釈迦様が死に臨んだ時の言葉に由来している。
お釈迦さまが死に臨んだ際、 弟子たちは、誰もたいへん嘆き悲しみました。
「お釈迦様が亡くなられたら、私たちはどうやって、 いったい何にすがって生きてて行けばいいのでしょう!..」
集まった暗い顔の弟子たちに、 お釈迦さまは、「自明灯」という言葉をお伝えになった。心はどういうわけか放っておくと、暗い考えに偏ってしまう。ですから、意識して常に自分の心に明かりを灯すように心がけなさい。
自明灯とは、自ら灯をつけて生きて行きなさい、という教えとしてある。自分の足できちんと歩き、自らの心の中に灯を灯しなさい。自分の心の中に灯がない人は、 自分自身を照らせないことは勿論のこと、 他の人を照らすことはできない。
人様の灯りに頼ろうとせず、 まず自ら進んで灯してあげよう、という気持ちが大事である。そんな感動の灯が、次から次へと点火されて行くことを「燈々無尽」と言う。
創業の精神を灯りとしどう伝えていけば良いのか、創業時の自らの「体験」という灯をつけて、後輩へと伝えていこうという試みである。




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消費増税へのマーケティング

2014年03月02日

Posted by ヒット商品応援団 at 13:11 Comments( 0 ) ビジネス
ヒット商品応援団日記No572(毎週更新)   2014.3.2.

新消費税導入まで1ヶ月を切り、ほぼ新価格設定が決まったようである。少し前に日本コカコーラの自販機における商品戦略について競争の激しいミネラルウオーターについては価格を据え置き(実質上値下げ)とし、他のコーヒー飲料などの商品については10円値上げをし、全体として3%の消費税アップ分を吸収調整する戦略であるとブログにも書いた。そして、他社はプライスリーダーである日本コカコーラの方式に準じるであろうとも。それ自体の指摘は間違ってはいなかったが、別な視点から導入後の消費変化の「何」が見えてくるか、今一度考えてみたい。

別な視点の一つは自販機市場という小さな市場としてではなく、少し広い飲料の流通市場での視点。そこにはコンビニもあればスーパーもある。最近では業態転換したかの如きドラックストアもある。1989年の消費税3%導入時、ある駅のキヨスクの飲料売り上げがめっきり減り相談を受けたことがあった。調べた結果、少し離れたところのコンビニに顧客が流れていったことによるもので、その理由はキヨスクは対面販売のため10円の値上げとなり、一方コンビには3円でその差7円によるもので、他の店へと消費移動するには十分な価格差であった。今回の自販機における10円の値上げは消費者はどんな答えを出すかである。

ところでこうした日常利用業態にあって、コンビニには昨年のヒット商品である煎れたてコーヒーがあり、スーパーには安いPB商品である飲料もあり、ドラッグストアも負けじと安売りをしている。つまり、多様な選択肢のなかでの値上げである。以前、嫌な言葉だが「消費増税は本物しか生き残らせない」とブログに書いたが、更に言うならば「消費増税は本当に好きなものしか生き残らせない」、そんな市場構造へと間違いなく向かっていく。つまり、対処テクニックでは超えられない、過去の好き度、必要度が端的に表れるということである。

数年前、価格に敏感なのは若い世代、under30であるとその消費について書いたことがあった。草食系男女と揶揄された世代であるが、車離れ、結婚離れ、社会離れ、政治離れ、・・・・多くの「離れ現象」に「私」が表れているところが世代特徴である。under30と名付けたのは日経新聞であったが、その世代特徴の一つとして物欲は乏しく、貯蓄に励み消費市場にはあまり登場することのない世代であると。
今回の消費増税ではどんな消費行動を見せるかであるが、リーマンショック後、「お弁当族」というキーワードで新しい節約生活が一つのライフスタイルとして注目されたことがあった。東急ハンズやロフトの弁当売り場が拡充され、特に男子弁当族が出現した頃の話である。つまり、こうしたセルフスタイルが更に進んでいくことは間違いない。単純化して言うならば、自宅でお茶を入れ持参するということである。この傾向は低価格居酒屋におけるセルフスタイルや食べ放題のブッフェスタイルと同じで、一種の合理的価値観によるものである。結論から言えば、本当に好きな商品については買うが、そうでない場合はセルフ化が広がるということである。自販機という流通から言えば、10円値上げ商品であれば一定の顧客の間では「自販機離れ」が起こるということだ。

もう一つの視点として、1円単位で明確な価格が表示・請求・支払いができるICカードなどのカード利用が増えるということである。例えば、プリペイドカードのSuicaやPASMOといった日常利用、しかも頻度多く利用することから、それは単なる便利さを超えて、「正確な価格」であることが大きな顧客安心を生む。しかも、脱法的価格表示などが出てくることが予測されるなかでの安心である。そして、新消費税導入は、総額表示と本体価格併記表示の2種類となり、混乱が生まれる。こうした混乱を払拭するには「正確な価格」、「1円単位の価格」の確認が必要となる。そうした意味合いからICカード利用が増えることは間違いない。
また、IC(Edy)機能付きのクレジットカードなどその利用の広がりは大きい。こうした決済方法と共に、その多くのカードにはお得なポイントシステムがついており、ポイントプロモーションが更に盛んになる。新しい「お得」のシステムとしてである。こうしたカード顧客の囲い込みに死にものぐるいになっているのが例えば楽天である。Yahooによるネット商店街への無料出店という競争もあるが、なんといってもガリバーamazonへの追撃であるが、消費増税を一つの機会とする顧客戦略である。

ところで、マクドナルドの高価格志向商品として「1000円バーガー」は大失敗に終わったが、対照的なのが吉野家で昨年12月に出した新メニュー「牛すき鍋膳」(並580円)がヒットしている。2ヶ月で700万食販売し、12月売り上げ(既存店)は前年比16%増、1月14%増と好調を継続させている。この理由の第一は丼ではなく、鍋という新しいスタイルにある。東京チカラめしが焼き牛丼という「ありそうで無かったメニュー」でヒットしたのと同じである。しかし、鍋はやはり季節商品であることと、競合も同様のメニューを出してくることは間違いないが、あのマクドナルドの「1000円バーガー」と比較すれば、マクドナルドの場合は単なる高級ハンバーガーであって新しいスタイルにはなっていない。つまりマクドナルドにとって顧客を引きつける「新しさ」は無かったということで、顧客は単なる高級志向に向かっていることなど全く無かったことが分かる。新しいスタイルで、しかも少し高いが試してみたい、そんなバランスのとれた新しいメニューが求められているということだ。結果、吉野家の場合、牛丼と比べ高価格になっても顧客支持を得ることができたということである。

4月以降その多くは値上げするが、牛丼のすき家のように値下げするチェーン店もある。どの場合も、総じて「様子見」である。先日鳥取の友人と消費税について話す機会があったが、昨年秋から始まった駈け込み需要の激しさについては全くその実感は無いとのことであった。しかし、首都圏市場においてはどの店もそうした需要狙いの売り出しをかけているが、前回のブログにも書いたように顧客へ届ける物流が間に合わない状況となっている。ちなみに、1月度の百貨店協会の売り上げに関する発表によれば、3ヶ月連続のプラスで、全国平均の前年比は2.9%増、10都市では4.2%増、東京はなんと24.7%増であった。いかに東京の駈け込み需要が激しいかを物語る一つの指標である。
こうした駈け込み需要の激しさは自己防衛策としてであり、小売りや専門店といった顧客接点をもつ企業経営者やマーケッターは「様子見」の価格設定にならざるを得ない状況にある。4月以降、どの程度の売り上げ減となるか、そしていつ頃から回復傾向を見せるか、それとも前回と同様長く低迷し続けるか、更にはポイントプロモーションを含め効果ある販促策の見極め、そうした課題が明確になるまでの様子見である。つまり、消費変化を見定め、夏には新たなマーケティング&マーチャンダイジングするということである。(続く)



未来塾(1)「街から学ぶ」浅草編

2014年02月21日

Posted by ヒット商品応援団 at 10:11 Comments( 0 ) ビジネス
ヒット商品応援団日記No571(毎週更新)   2014.2.21.

第一回目の「未来塾」は「街から学ぶ」というテーマを選んだ。街は時代と呼吸すると言われているが、呼吸することによって街は常に変化し続ける。この変化をどう読み解くのかというテーマこそビジネスの未来を見いだす芽となる。そうした意味を踏まえ、明治維新以降いち早く西洋文明を取り入れたのが浅草である。その後、どんな変化の波が浅草に押し寄せ、そして「今」があるかそんなマーケティングの視座をもって、観察した。

「街から学ぶ」時代の観察・浅草




この薄暗い地下道の写真を銀座線浅草駅からの側道であると言い当てる方は極めて少ないと思う。観光客どころか、東京に住む人でさえ知らない街の風景である。今回の学ぶ街に浅草を選んだのは、こうした古くからの路地裏・横丁が今なお残り、歴史という時間の痕跡・生活の営みと「今」という新しさとが奇妙に同居している「浅草」を学んでみたい。

2013年度の海外からの観光客数は1000万人を超えた。ここ数年は欧米の観光客に増して、東アジア、東南アジアの人たちで雷門から浅草寺に伸びる仲見世通りはいつ行っても満員電車並みの混雑である。円安と渡航ビザ発給の緩和によるものだが、浅草の街から見える東京スカイツリー人気の相乗効果と相まって、観光都市東京の中心地となっている。台東区による調査では、上野など区全体では平成24年度4382万人、外国人観光客425万人、平成22年度と比較すると+7.3%増、3.0%増と年々増加している。

千年の歴史・文化をたどる京都や奈良観光はいわば楽習旅行であるのに対し、都市観光は非日常的でそこに繰り広げられる、新しい、珍しい、面白い、そうし刺激があふれる巨大遊園地のジェットコースターに乗るようなエンターテイメン観光といえるであろう。
ところで今日の浅草の誕生・ルーツは周知の通り江戸時代にある。その江戸の人口の内武士は半分ほどの政治都市であった。表現を変えれば何一つ生産しない武士、しかも、その多くは単身赴任、いわば「消費都市」が江戸であった。江戸初期40万人ほどであった人口は最高時130万人にまでふくれあがり、幕府から「人返し令」が発令されるほどの世界No.1の都市であった。今日の都心回帰、東京一極集中とは比較にならないほどの魅力、江戸は人を引きつける「経済」と「生活文化」の豊かさがあった訳である。その生活文化、江戸文化の中心が浅草であった。



そして、浅草寺の参道として発展した浅草の町は明治維新後は西洋文明をいち早く庶民の生活へ消費へと取り入れる街となる。大正から昭和にかけて、日本一の娯楽の中心地として繁栄していく。六区ブロードウェイは日本で初めて常設の映画館がオープンしたところである。映画「Always三丁目の夕日」で描かれた昭和30年代には30もの映画館がある興行街であった。しかし、娯楽のあり方もテレビの普及などによって大きく変わり、次第に閉館していく。今もなお小さな芝居小屋もあるが、娯楽も変化の荒波にもまれ、浅草ランドマークの一つであった国際劇場は浅草ビューホテルへと変わり、ある意味激変する時代の変化のありようを痕跡として、あるいは新たな変化として残す、そんな時代を映し出す街となっている。



その変化の象徴である浅草のランドマークの一つである遊園地「花やしき」は1853(嘉永6)年の開園である。以降新しいアトラクションを取り入れてきたが、遊園地の趨勢は大型化、スピード化といったより強い刺激を求める時代にあって、何度か閉園の危機にあったが、多くの企業や浅草っ子の支援を受けて、逆に懐かしいレトロな遊園地として再生を果たしている。





衰退しつつある娯楽施設に替わって新仲見世商店街には写真のようなディスカウントショップ「わけあり専門店」が誕生している。こうした「今」という時代ならではの専門店を含め全国展開をしているチェーン店が商店街を構成していることは言うまでもない。

街は生き物であり、日々呼吸し変化し続けている。その象徴であろうか、再開発プロジェクトが進行している。その名も「マルハン松竹六区タワー」。地下1階、地上8階建てだが、1~3階が遊技場で、劇場はその上にあるという。狙いは浅草寺観光に訪れたアジア観光客の取り込みであるという。周知のようにマルハンはパチンコ&スロットの最大手企業である。どこまで成功するか未知数であるが、これも一つの変化であることには間違いない。


新しさと古さ




東京スカイツリー
634m世界一の電波塔の眺望という話題に集まった観光客は東京スカイツリータウン全体では初年度約5,080万人にも及んだ。
ところでこの東京スカイツリーがある業平橋(なりひらばし)という駅名を開業と共に東京スカイツリー駅に改名した。高校の教科書に出てくる周知の話しであるが、伊勢物語の「東下り」に、在原業平たち一行が隅田川で渡し船に乗る場面がある。その業平にちなんだ名前である。そうした歴史を引き受けていた駅名を東京スカイツリーに改名したということは、墨田区も周辺住民も勿論デベロッパーである東武鉄道も大賛成し、「新たな街づくり」「新しい下町」を目指したということである。
東京タワーを「Always三丁目の夕日」が描いたように、あらゆるものが荒廃した戦後日本の復興のシンボル、夢や希望を託したタワーであったのに対し、東京スカイツリーにはそうした物語はない。あるのは世界一高い634mのタワー、その眺望である。しかし、それでも人が押し寄せるのは隣り合わせにある古い下町浅草との複合的テーマパ−ク、新しさと古さが同居する観光の街として存在しているからである。


神谷バー
創業明治13年、浅草1丁目1番1号にある日本で一番古いバーである。神谷バーと言えば、その代表的メニューの一つである「デンキブラン」であろう。「庶民の社交場」として明治以降今日に至るまで変わらぬポリシーで運営されているが、「デンキブラン」というカクテルはデンキ(電気)とブランデーの合成されたネーミングである。電気がめずらしい明治の頃、目新しいものというと"電気○○○"などと呼ばれ、舶来のハイカラ品と人々の関心を集めていました。さらにデンキブランはたいそう強いお酒で、当時はアルコール45度。それがまた電気とイメージがダブって、この名がぴったりだったのです、とHPに紹介されている。
大正時代は、浅草六区(ロック)で活動写真を見終わるとその興奮を胸に一杯十銭のデンキブランを一杯、二杯。それが庶民にとっては最高の楽しみであったとも。
何回かこのデンキブランを飲んだが、かなり強い刺激のあるカクテルである。この神谷バーもいつ行っても満席状態で、浅草住民だけの社交場としてではなく、日本の社交場として多くのシニア世代の観光客を集めている。(後半へ続く)



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「未来塾」のお知らせ         

2014年02月16日

Posted by ヒット商品応援団 at 13:41 Comments( 0 ) ビジネス
ヒット商品応援団日記No570(毎週更新)   2014.2.16.

4月には新消費税8%が実施される。1997年の5%導入の前後にも多くの革新と呼べる新しいビジネスが生まれたことは周知の事実である。当時「中抜き」と呼んでいた中間流通を無くし、自らリスクを負って顧客へ直接販売していくビジネス。その代表的なものがファッションビジネスではSPAであり、ファストフードビジネスであり、インターネットを介した通販ビジネスであり、ある意味では農業における6次産業化も含まれるかもしれない。今回の新消費税を期にどんな新しい市場創造への動きが出現するかブログ読者と共に考えていきたいと思っている。
ところで、こうした立ちはだかる多くの壁を超えて未来を知るにはどうしたら良いのか、未来について確実に言えることは周知のように2つしかない。

“未来は分からない。
未来は現在とは違う。
未来を知る方法は2つしかない。
すでに起こったことの帰結を見る。
自分で未来をつくる。
 

つまり、自分で未来をつくらないのであれば、「すでに起こったことの帰結を見る」という方法をもとに予測していくしかない。「既に起こった帰結」とは、次々と起こる変化、消費の変化はもとより社会の変化を観察すること。そして、それら変化は一時的なものではなく、大きな潮流としての変化、生活価値観の変化であることを検証する。更に、この変化は意味あるもの、つまり重要なことであると認識した時、その市場機会をもたらすものであるかどうかを問うこと。例えば、20年前から指摘されきた「少子高齢化」のように動かしがたい事実を集め、それがどんな方向へと進んでいくのかを見定めていく方法である。この未来を見定めていくためのマーケティング情報を各分野の専門家の力を借りて、互いに学び合う、そんな学習の「場」をWeb上に持ちたいと考えています。その学びの場を明日のビジネスへのヒントやアイディアとなっていただくために「未来塾」と呼び、月1回ほどのペースで公開します。今「未来塾」として予定している「学び」のテーマとしては、
「街から学ぶ」浅草編、吉祥寺編、秋葉原・アキバ編、他
「小売り現場から学ぶ」
「地方のビジネス起こしから学ぶ」
「創業理念を伝える暗黙知を学ぶ」
「オリンピックに向けたスポーツビジネスを学ぶ」
「消費増税後の変化を学ぶ」
「新たな価値創造ビジネスを学ぶ」
こうしたテーマを専門としている5〜6名のボードメンバーと共にWeb上にて公開していきます。テーマによっては自ら未来を創るべく今なお革新的な取り組みをされているプロジェクトや経営者へのインタビューを組み込んだ「未来塾」として運営していきます。今週末からスタートいたしますので、ご期待ください。(続く)



「今」を選択

2014年02月12日

Posted by ヒット商品応援団 at 13:58 Comments( 0 ) ビジネス
ヒット商品応援団日記No569(毎週更新)   2014.2.12.

東京都知事選が終わり、舛添候補が新都知事になった。ある意味当然の結果であると思う。「当然」という意味は、推薦した自公の過去の選挙実績やその組織力の結果であるという政治としての意味ではない。このブログは政治ブログではないが、各候補者が掲げた政策公約の選択がどうであったか、その意味合いについてである。ここ数年の生活者心理の動きからすれば、舛添候補が強く訴えた社会福祉や景気雇用といった政策課題解決への選択は「当然」の結果ということである。ちなみに、NHKの出口調査によれば、

「最も重視した政策は何か」尋ねたところ、「景気・雇用対策」と答えた人が最も多く、31%。 次いで「原発などエネルギー政策」が22%、「医療・福祉の充実」が21%、 「首都直下地震など防災対策」が8%、「教育・子育て支援」が7%、 「東京オリンピックの準備」が4%。 このうち最も多かった「景気・雇用対策」と答えた人のうち、60%余りが、舛添さんに投票したとしている。

東京に住んでいるとわかるが、東京は多くの点で日本が抱える問題の縮図となっている。例えば、少子高齢化といった問題についても保育所は少なく待機児童は8000名を超えている、いやその数倍にも及んでいるとの報告もある。高齢化といった問題にしても高度成長期に作られた多摩ニュータウンを始めとした団地群では単身・高齢化が進み、限界集落に近いところまで過疎化が進んでいる。更には保育所が少ないと同様に、特養のような費用面で入り易い老人ホームが決定的に少ない現実がある。
株高はごく少数の株保有者や金融関係事業者にとって景気は良いが、収入が増えてはいないことから、全体としては決して景気が上向いているとは言えないし、失業率が是正されたといっても補正予算による公共工事といった非正規雇用が多く、安定した雇用にはなってはいない。つまり、「今」ある現実課題をどうにかして欲しいという「内向き」な心理となっている。

一方、特に細川・小泉連合が掲げた「脱原発」が得票として伸び悩んだのも、大雪といった天候ということもあるが、これも「当然」である。勿論、得票は政策公約だけではないが、「脱原発」は福島の人たちにとっては切実な「今」も直面する問題であるが、残念ながら都民にとっては既に「今」の問題ではない。「脱原発」は直面する大きな生活上の問題ではなく、「明日」のエネルギー政策、ある意味「明日」の日本の方向といった文明論的課題である。政策公約面だけで言えば、都民は「明日」ではなく「今」を採ったということである。その象徴例ではないが、NHKの出口調査によれば、「東京オリンピックの準備」という「明日」のための政策はわずか4%である。

実はこうした「今」と「明日」を共に満たした魅力ある都市が東京にはある。都民にとってはここ数年住んでみたい街NO.1となっている吉祥寺(武蔵野市)である。井の頭公園という緑に囲まれた街というイメージから住んでみたい街と考えがちであるが、そうではない。かなり以前から待機児童0を達成し、30歳代の子育て世代だけでなく20歳代の若い世代の流入もあり人口も増加傾向にある。結果どうなるか、出生率も上がり少子化問題の多くを解決している。また、高齢化についても現在の子育て世代が高齢を迎える時代を見据えた長期計画も立案しつつあるという。
また、時代のトレンドを提供する商業施設と共に、戦後の闇市を思わせるハモニカ横丁という飲食・商店街もあり、新しさと古さが同居した独自な活気ある街となっている。そのなかには、40年間行列が絶えたことの無い和菓子の店「小ざさ」もこの横丁の一角にある。何故こうした街ができたかと言えば、3期目を迎えた武蔵野市長の前職は都市プランナーで、一言で言えば街づくりマーケティングの先駆者であったということである。(詳しくは今後ブログにも公開する「未来塾」にて)

こうした事例が既に東京にはあるのだが、生活者の「今」意識は選挙だけではなく、いや消費面においてはここ十数年強く出ている。ある意味デフレ経済の進行とパラレルなものとなっている。それは昨年秋からの住宅需要の動きを見てもわかるように、政府が消費増税後にも住宅取得への税制面を含めた助成策をアナウンスしても、ほとんどそうした動きにはなってはいない。予備校講師の林先生ではないが、買うなら増税前の金利の安い「今でしょ」という消費行動となっている。そして、前回のブログにも書いたが「今」を求めた激しい駈け込み需要が生活のあらゆる面で続いている。そして、そうした動きを加速するかのように、多くの小売り店頭には、「増税前に○○」というセールコピーが溢れかえっている。

こうした生活者の内向きな自己防衛的消費の他にも、パート・アルバイト求人の申し込みが急増しているという。2008年のリーマンショック後にも同じような職を求める人が増えたが、この動きは増税後もしばらくは続くこととなる。勿論、本業である仕事をやりながらの副業も活発化する。
また、先日JR貨物が駈け込み需要対策として輸送力を増強するとの発表があった。1997年の消費増税の時は、イトーヨーカドーを始めとした大手流通は「消費税分還元セール」を行い大ヒットした。この時他の流通も急いで仕入れを増やそうとしたが、生産&物流が間に合わず売れるチャンスを逃した経験がある。今回の激しい駈け込み需要をチャンスとするにはメーカーの増産と物流の体制が不可欠となっている。3月までの激しい駈け込み需要の後、「今」を求める内向きな生活心理が4月1日以降はどのような現象として表れてくるか恐ろしい感がしてならない。消費増税前の激しい駈け込む需要と共に、実はファストフードはマクドナルドを筆頭に軒並み大苦戦している。4月以降、非課税の商品やサービスを除きあらゆるものが値上げされる。ごく一部の経済アナリストは深刻なデフレ状態に落ち込むのではないかと指摘をしている。つまり、更に消費心理は内向きになり、食で言えば外食が減り内食へと向かい、円安理由から旅行も海外から国内へ、そして例えばメニューとしての新しさもある格安なクルージング人気が更に沸騰するであろう。消費が冷え込むといった程度ではなく、凍結状態になり冬眠へと向かう。つまり、今から冬眠を覚ます着眼やアイディアを考えておくということだ。(続く)



消費増税をめぐる商品戦略 

2014年02月02日

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ヒット商品応援団日記No569(毎週更新)   2014.2.2.

4月以降の消費増税に備えた駆け込み需要が激しくなったと前回のブログに書いたが、やっとマスメディアもその激しさの内容に気づき始めた。前回のブログで百貨店が行った消費税5%のままでの「夏のボーナス払い」にいち早く顧客が反応し、売り上げを大きく伸ばしていると書いた。そうした税率への対応のみならず、まだまだ寒い時期であるにも関わらず既に店頭には駈け込み需要を狙った春物ファッションが並ぶようになった。3月になったら夏物が店頭に並ぶのではないかと半分冗談まじりの会話がなされるほどである。更には、4月になったら食卓に並ぶ食事はと言うと、賞味期限の長い缶詰やレトルト食品、あるいは塩乾物類が並ぶであろうと。そして、冷凍庫を開ければ保存された生鮮商品が詰まっていると。これらは冗談ではなく、ほとんど本気の議論がなされる状態である。

駆け込み需要とは消費増税前の消費のことであるが、この消費は必要となるであろう季節商品や買い替え時期を早める商品のことである。つまり、買い替え商品はPCや家電製品、家具・インテリアあるいはスマホなどが該当するが、増税前に「お父さんのスーツも購入」といった通常であれば消費の最後となる商品も当てはまるということである。当然であるが、予想外の商品まで売れるということである。つまり、それだけ自己防衛が激しいと理解しなければならない。この激しさを更にアップさせているのが円安による電気ガス料金の値上げを始め多くの生活必需品の値上げラッシュである。

こうした円安は旅行業界のメニューを大きく変え、海外旅行から国内旅行への消費移動については昨年のブログにも書いた。ところで、昨年の訪日外国人が1000万人を超え、中華圏(香港、台湾など)観光客も一時の減少から再び増加の傾向にある。この傾向は円安傾向と共に更に進んでいくこととなる。こうしたなかで重要なことは、外国人の日本への関心・興味を創りメニュー化していくことである。例えば、かなり前から指摘されているが、長野地獄谷野猿公苑の温泉につかるお猿さん目当ての観光客のように。また、以前から真夏のオーストラリアやニュージーランドから雪質の良い北海道ニセコにスキー客が押し寄せているように。
ユネスコの世界文化遺産に和食が選ばれたが、高級料亭の和食だけでなく、リーズナブルな和食を提供する外国人仕様の旅館や居酒屋なども流行ることになる。そして、インターネットの時代であり、どんな地方であっても外国人の興味・関心が見つかれば、YouTubeを使って集客することは十分可能な時代である。

こうした市場構造の変化と共に、消費増税を睨んだ「値下げ」商品が出始めた。その第一弾が日清食品の「ラ王」で、パッケージなど原材料の工夫によりコストを下げることができたという。希望小売価格現行237円を4月7日から39円値下げし198円にすると発表した。何と主力商品の16.5%の値下げである。これは苦戦するファストフーズ顧客がコンビニへと流れており、その背景には価格があることへの理解から生まれた戦略である。特に苦境に陥ってしまったマクドナルドが昨年値上げに踏み切ることによって客単価を上げ、利益を確保する戦略がものの見事に失敗した。その教訓からの値下げ戦略である。円安によるコスト上昇、プラス消費税アップ、という二重の苦難を強いられているのだが、昨年から指摘をしてきたが、例えば「すき家」のように価格面だけでなく、牛肉以外の原材料費の安い鳥や豚を使ったメニューへの工夫などで乗り越えなければならないということだ。
また、前回のブログで自販機の飲料の価格動向について書いた。自販機は10円刻みであることから全体として値上げ分を調整していく方向であると最大手の日本コカコーラの発表についてブログに書いた。そして、先日更にその個別商品として、ペットボトルの「い・ろ・は・す」の価格は据え置く(値下げ)するとの発表があった。これも日清食品の「ラ王」と同じ考え方に立っており、主力戦略商品は値上げしない(実質的には値下げ)という戦略ということである。マクドナルドの主力商品である100円バーガーやビッグマックの値上げ結果を見据えた判断ということだ。

ところで、昨年までのエコノミストは増税後の4月〜6月はある程度落ち込むが、それも限定的で1997年の増税時の落ち込み10%台には至らないであろうと。しかも1997年当時はアジア通貨危機、更には国内金融危機があったからであると。しかし、最近ではそうした発言は見られなくなってきた。年が明け、株価は低迷し、追い打ちをかけるように米国の金融緩和策が引き締めへと移行し始め、その影響から新興国に投資してきた資金が引き上げられ始め、アルゼンチンやトルコではインフレが始まったと。思い起こせば、1997年当時のアジア通貨危機はソロスを始めとしたヘッジファンドが資金を引き上げたことから始まった。そうした金融危機ほどではないにしろ、世界中で問題が起こり始めているという背景からである。
そして、一昨年の株価から50%も上がったのも外国人投資家、それもヘッジファンドによるもので、日本の機関投資家や一部個人投資家は売りこしている実態が続いていることを分かっている。今回の激しい駈け込み需要や値上げによって失敗したいくつかの事例を目の当たりにし、日本の賢明な経営者もそうした状況は既に熟知している。一方消費者もTVで報道されるような浮かれた景気にはないことを感じとっている。消費者も、経営する側も、等しく大変な時を迎えつつある。(続く)



激しい駈け込み需要と価格表示 

2014年01月15日

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ヒット商品応援団日記No568(毎週更新)   2014.1.15.

年が明け一斉にバーゲンが始まった。今年の新春売り出しは百貨店やSCといった流通だけではなく、家電量販を始めインテリア・家具など大型専門店が消費増税前の「駈け込み需要」を全面に出した売り出しとなっている。そして、消費者側も旺盛な消費を見せている。恐らく売り出しを組んだ百貨店やSC、専門店は予測以上の売り上げになっていると思う。
こうした駈け込み需要のあり方で更に予想以上の売り上げを上げたのが「夏のボーナス払い」を実施した百貨店である。つまり、今お買い上げいただくと消費税5%のままボーナス時に支払うことになるというカード戦略である。実は昨年秋口から百貨店を先頭にカード顧客の開拓が盛んになった。この目的はリピート顧客の開拓と増税後のポイントプロモーションに備えてであったが、顧客の側は百貨店以上に「消費税」にシビアで8%と5%の差3%のお得を見事に手に入れているということである。

ところで日経新聞を始め経済の専門家は4月の消費増税導入は限定的で夏には回復基調になり、10月からは昨年度並に戻ると楽観的な予測をしている。しかし、表向きはそうした言説を繰り返しているが、消費する側は極めて厳しいものとして受け止めている。ちょうど都知事選が始まるが、事前のメディア各社の世論調査を見ても、景気や福祉、原発に関心を寄せており、オリンピックへの関心は低い。オリンピックを景気浮揚への起爆剤とする政府の考えとは異なり、極めて冷静に景気を見ているということだ。
3月に向け更に激しい駈け込み需要が想定されるが、メディアも経済の専門家も増税後の消費予測に欠けているのが10数年続いてきた消費者のデフレ心理である。5年ほど前低価格競争の先に「訳あり商品」ブームが起きたが、今また「駆け込み」ブームが起きている。これら全てはデフレ心理が引き起こしたブームである。新しい価値の創造、それが気に入れば一定の高い価格の商品でも買うが、一般的平均的なコモディティ商品であれば比較しより安い価格の商品を買う。その顕著な例が、百貨店で実物商品を見て、後は安いネット通販で購入する。既に数年前からこうした傾向、百貨店のショーウインドー化が始まっている。

先日の日経新聞にマクドナルドの業績が発表されていた。12月の既存店売り上げは前年同月比9%減、6ヶ月連続で前年を割り込んでいるとのこと。その内訳であるが、客単価は3.5%上昇したものの、客数は12.1%減となり、この結果は値上げによるものであることは自明である。原田氏に替わったカサノバ新社長は次々とチキンを含めた新メニューを導入し、昔ながらのアメリカンテイストの広告を展開しているが、元の集客にはほど遠い結果となっている。しかも今頃になって宅配強化を打ち出しているが、メニューだけでなくいかに業態としても遅れてしまったかである。2010年から始まっている大量閉店・リストラであるが、今年度も閉店が続くであろう。

こうした消費者に対し、増税の壁をどう超えるか、企業各社の対応が見えてきた。分かりやすく解説した記事が日経MJ(1月8日号)に出ている。ある意味、対顧客への戦略は「価格表示」に表れ、その価格表示の問題点は一言で言うと次の2点に集約される。

1、消費者は昨年来のどの調査結果を見ても、慣れ親しんだ「総額表示」を求めているが、企業・小売り側は「税抜き(本体価格)」及び「税抜き(本体価格)」と「総額」の併記となっており、企業と消費者との間に違いが出ている。
2、特に、SCにおいては出店テナントの価格表示の方針に任せることから、こうした2つの価格表示法が1つのSC内で行われることとなる。例えば、ららぽーと豊洲の場合、GAPは総額表示でユニクロは税抜き表示といった異なる価格表示が併存することとなる。

企業の意図するところは「価格転嫁」をスムーズに行うことを考えて、「総額表示」ではなく、どちらかというと「税抜き(本体価格)表示」に力点を置いたものとなっている。しかし、消費する側は「総額」で高いか安いかを従来通り判断することとなり、小売り現場・消費者共に混乱することとなる。今回の駈け込み需要の激しさを見るにつけ、お得感はよりシビアなものとなっていくことが予測される。そして、シビアな目は表示内容に注がれることになり、間違いなく価格表示を変える企業が出てくる。そうしたことを見越した自在な価格のラベルを印刷できるメーカーに注文が殺到していると聞いている。

ところで10円刻みで販売されている自販機のドリンク類の販売はどうなるか興味深く見ていた。最大のベンダーであるコカコーラグループは一部の商品の価格を10円値上げし、他の商品を据え置き、全体として3%分を調整する意向であると発表があった。他のベンダーもこの方式を取り入れる方向で検討されるようであるが、一時期80〜90円という低価格自販機が大阪で流行ったことがあったが、こうしたエリアごとの価格差問題や電子マネー対応の自販機はどうなるのか等、未解決の課題は多い。
ちょうどJR東日本の運賃改定におけるICカードと券売機の2つの方式採用と同様で、券売機も自販機も10円単位の扱い方に利用者の納得が得られるような「調整」が検討されているということだ。いづれにせよ、今回の消費税8%導入は単なる社会保障を運営するための財政再建といった側面だけでなく、大きな社会問題、多くの社会システムの改変を伴う激変であると理解しなければならない。(続く)


タグ :消費増税


妄想せよ、そして行動せよ 

2014年01月03日

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ヒット商品応援団日記No567(毎週更新)   2014.1.3.

新年明けましておめでとうございます。
毎年元旦の主要新聞各紙を見ながらマスメディアはどんな年度として期待し予測するのか、そんな記事を踏まえながらブログを書いてきた。新聞のみならず多くのメディアが注目するのがやはり「消費増税」であるが、今年は大きなテーマになってはいない。日経新聞だけが1面で「常識を超え新しい世界へ」とし、あのスティーブ・ジョブズの言葉”ハングリーであれ、愚かであれ”を入り口にして、創造と破壊の「イノベーションの歴史」を見開きで特集している。実は消費増税を通じ、こうしたテーマを考えるのが本来なのだが、一般論としての意味でしかない元旦号であった。

ところでその消費増税であるが、どのメディアも経済の専門家も3月までは駈け込み需要となり、4−6月は消費は落ち込み、7−9月期には回復基調に戻り、10月以降は昨年後半のような景気、リーマンショック前の経済に戻るという予測である。
こうしたマクロ経済としてのいわば一般論ばかりで、アナリストが指摘しない重要なことが1つある。それは円安、株高の実体で、日本株買い、円売りの主役は昨年1年間を通し、外国投資家、特にヘッジファンドによるもので、国内の投資家が11兆円の売り越しであるのに対し、外国投資家は137兆円の買い越しであるという事実である。その外国投資家は主に米国の金利と為替によって動くという事実である。日本の実体経済が株価を押し上げているわけではない。浮かれてはならないということである。そして、4月以降の消費増税によって日本国内の消費は落ち込む。結果どんなことが予測されるか。間違いなく、日銀は更なる金融緩和策、つまり国債を買い増すことになると予測される。結果、円安が更に進むというシナリオである。

日本経済が回復基調にあるのは事実であるが、リーマンショック以前と比べ産業構造自体はそれほど変わってはいない。あるとすれば貿易赤字を海外での所得収入で補うという製造業主体の貿易立国ではなく、輸出入の内容自体が変化し始めているという点にある。その分かり易い例が日本への観光誘致であり、昨年やっと外国人観光客が1000万人を超えた。これも円安とともにビザ発給を緩和したことによるものである。そして、注目すべきは東アジア、東南アジアからの観光客が増え始めたことによるもので、中国以外の国においても所得水準が上がってきたことに着眼しなければならない。
そして、観光客を引きつける日本の魅力であるが、クールジャパンと総称される日本固有の精神文化にある。マンガ、アニメ、禅、サムライ、・・・・・サブカルチャーから富士山と共にユネスコに文化遺産として登録された「和食」まで、その広がりに着眼すべきであろう。面白いことに、昨年日銀がゆるキャラ「くまモン」の経済波及効果は2年で1244億円に及ぶという発表があった。実はそうした発表だけではなく、ゆるキャラはマンガ、アニメといったサブカルチャーの裾野を創っているということにビジネス着眼すべきである。また、「和食」もそうした視点に立つと、数年前始まったご当地グルメ「B1グランプリ」も「和食」の裾野を創っているということだ。こうした発想の先には、ゆるキャラも輸出アイテムにもなるし、イベントだけに終わらず通販ビジネスへと広がった「Bー1グランプリ」を始め、ご当地グルメにも海外からの観光客誘致にも使えるということでもある。そのビジネス可能性であるが、既に数年前からあの「AKB48」はアジアへと輸出を始めていることを思い起こせば十分である。
重厚長大型輸出産業以外にも新しい文化型ビジネスの芽が出てきたということである。ちょうど江戸時代の浮世絵がヨーロッパの画家たちに大きな影響を与えたように、文化経済が次のビジネスをリードしていくということだ。

しかし、円安が更に進んだ時、資源を持たない海外に依存している日本においては、当然エネルギー価格を始め物価が上がることが予測される。既に電気料金やガソリン価格、あるいは食品が高騰しているがこの傾向は更に進むということである。消費増税×物価高騰というかけ算の消費心理、しかも3%アップというがそうではなく8%の消費税である。8%の消費税は予想以上に消費を萎縮させ、厳選志向は減選へと向かう。ハレ(特別な)の日とケ(日常)の日という言い方をするならば、ハレの日のプチ贅沢は更にプチとなり、回数も減る。そして、ケの日は更に質素にやりくり算段するという消費生活になる。
こうした自己防衛的認識はコスパ型消費を更に進行させる。例えば、軽自動車への増税に多くの反対があるのも、地方の生活者にとって良きコスパ型商品であるからだ。つまり、大増税時代に入ったという消費実感である。この傾向は昨年後半からの駈け込み需要、省エネ・コスパ型家電製品の売り上げ好調さにも鮮明に出てきている。あるいは数年前からシニアマーケット狙いの旅行ビジネスとしてクルージングが話題となっていたが、売れたのは外国籍クルーズ船による台湾などへの安い船旅である。航空会社におけるLCCと同様の格安船旅で1泊1人1万円台という価格である。まだまだデフレ型新市場が生まれるということだ。

そして、こうした増税実感は自己防衛的消費として表れてくる。特に若い世代においては「学び」と「お金」の認識転換が迫られていくこととなる。税負担は大きくなったが、果たして年金を受給できるのであろうかと。「学び」も「お金」も自己投資という視点で再編集される。欲望を喪失したかのように言われ草食系と揶揄される若者であるが、肉食獣として狩りに出かけざるを得なくなったということだ。極端な言い方をするとすれば、貯蓄ではなく、借金をしてでも「自己防衛のための何か」を手に入れるために投資をするということである。例えば、グローバルビジネスとしては不可欠となる海外での語学研修留学は当たり前となり、更に今後伸びるであろう専門分野での海外留学となる。お金の面においても貯蓄ではなく、リスクを背負った利回りの良い債券や株式、場合によっては不動産投資にも向かう。ある意味、内向きな世界から外の世界へのシフト。デフレの時代からインフレの時代への価値転換が若い世代から始まるかもしれない。消費増税はこうした価値観の転換を促すということだ。但し、数年間はデフレを基調としインフレが混在するまだら模様の市場、外側と内側とを行ったり来たり、といった市場構造になる。

さて、こうした傾向に対しどう取り組まなければならないかであるが、冒頭のスティーブ・ジョブズの言葉”ハングリーであれ、愚かであれ”。この言葉を身近で具体的なことに置き換えるとすれば、発想を変えろ。いやもっと極端な表現をするとすれば、常識から離れろではなく、妄想せよ、となる。
1997年の消費税5%導入時にもこうした「妄想」は至る所で現実化されてきている。その後続くデフレ時代を見越したマクドナルドや吉野家、SPAという方法をもって市場に参入したユニクロや渋谷109のエゴイスト、インターネット上に新しい商店街をつくった楽天、更にはエブリデーロープライスによって世界一の流通業となった米国ウオルマートを見に行かなくても日本のスーパーオーケーを見に行けば良いと言われた業態。こうした革新的な、いや妄想と呼ぶにふさわしい企業群である。そして、数年前から同様の芽が出始めている。このブログにも何回も書いてきたが「俺のフレンチ」もそうした新業態、妄想業態の一つである。その「俺のフレンチ」は海外に展開し北米NYに海外本部の拠点を置くという妄想計画の発表が昨年あった。

そして、前回の消費増税導入以降の勝ち残り組である企業群も次なる変革を迫られている。例えば、昨年1年間増税対策としての「値上げ」を実施し、客単価を上げるメニュー戦略として1000円バーガーを出したマクドナルドも良い成果は得られてはいない。昨年11月度の売り上げ内容を見ても客数離れは依然として続き、客単価アップによっては補いきれない売り上げとなっている。楽天市場も出店料0円を掲げたYahooの追撃と、その向こうには最大の競争相手であるamazonがいる。つまり、この2014年はより過酷な競争市場になるということである。そして、この困難な状況を突破するには、妄想せよ、そして行動せよ、である。(続く)



2013年ヒット商品番付を読み解く 

2013年12月06日

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ヒット商品応援団日記No566(毎週更新)   2013.12.6
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お知らせ:来年は消費増税という混乱と激変の年になることが想定されます。そこでより具体的応援となるようにビジュアルを組み込んだブログとしてリニューアルいたします。また、現場にて活躍されている仲間にも投稿してもらい、「次」に向かうための学習の場を目指したいと考えています。




駆け込み需要の本質

2013年11月20日

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ヒット商品応援団日記No565(毎週更新)   2013.11.20.
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時代病 

2013年11月05日

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ヒット商品応援団日記No564(毎週更新)   2013.11.5.
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嘘と本当

2013年10月25日

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ヒット商品応援団日記No562(毎週更新)   2013.10.25.
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既に始まっている消費の未来

2013年09月23日

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ヒット商品応援団日記No562(毎週更新)   2013.9.23.
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タグ :消費増税


オタクの何に着眼するのか

2013年09月05日

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ヒット商品応援団日記No561(毎週更新)   2013.9.5.
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消費増税心理の今

2013年08月29日

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ヒット商品応援団日記No560(毎週更新)   2013.8.29.
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タグ :増税心理


消費増税時の価格表示とお得感

2013年08月12日

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ヒット商品応援団日記No559(毎週更新)   2013.8.12.
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タグ :消費増税


消費増税を見据えた戦略が出始めた

2013年07月04日

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ヒット商品応援団日記No558(毎週更新)   2013.7.4.
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好況感と不況感

2013年06月26日

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ヒット商品応援団日記No557(毎週更新)   2013.6.26.
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